火災保険のイメージ写真

こんにちは!不動産ハッカーの管理人です。

賃貸住宅を借りるときに、不動産会社の見積もりには、当たり前のように火災保険料が入っていますよね。

保険料は1年契約で1万円や、2年契約で2万円など、微妙に高い金額だったりします。

そこであなたは、下記のような疑問が浮かんだのではないでしょうか?

「この火災保険って強制なの??加入する義務はあるの??」

結論から申し上げますと、火災保険への加入は「強制」です!

世の中のほとんどの賃貸物件は、火災保険に加入することを条件に、入居者を募集しています。

加入をこばめば、賃貸住宅を借りることができないでしょう。=強制です!

ただ、不動産会社がすすめる火災保険は、保険料が必要以上に高くなっていることがあります。

補償内容を見直したり、他社の火災保険を選ぶことで、保険料を安く抑えることができる可能性があります。

そこで、今回は、元不動産営業マンが賃貸住宅における火災保険について、分かりやすく解説していきたいと思います。

それではまいります!

1.火災保険への加入が強制の理由

火災保険が強制の理由は、貸主が下記のような最悪の事態をさけたいからです。

  1. 借主が火事を起こす。↓
  2. 借主は貸主に対して賠償責任を負う。↓
  3. 借主は高額な損害賠償を支払うことができない。↓
  4. 貸主は困ってしまう。

借主は、賃貸借契約の「前」であれば、法律的には火災保険に加入する義務がありません。
あくまでも任意になります。

しかし、火災保険に加入しなければ、貸主にとってはリスクが大きいのです。

したがって、「お部屋を貸すけど火災保険に加入することが条件ね!」としています。=強制していることになります。

1-1.「強制」は違法じゃないの?

「強制」との言葉を使うと乱暴な印象になりますが、基本的に違法ではありません。

これについては、不動産流通推進センターでも「法令に抵触するというようなことはない」との見解を示しています。(参考:不動産流通推進センター

建物の賃貸借契約は、民法の「契約自由の原則」をもとに締結されます。

契約自由の原則とは、ざっくり言えば「常識や法律の範囲内であれば、自由に条件をつけて契約していいよ!」といった内容です。

「火災保険への加入」を入居の条件とすることは、契約自由の原則の範囲内と考えられます。

1-2.消費者契約法に違反しないの?

消費者契約法の第10条の「消費者の利益を一方的に害する条項は「無効」じゃないの?」との意見がありますが、保険の契約内容が不当なものでない限り、違反しないと考えられます。

賃貸住宅の場合、建物本体には貸主が火災保険をかけており、借主が保険をかける範囲は建物内部の家財などが中心です。

決して不当ではなく、むしろ借主にとってメリットのある内容です。

したがって、消費者契約法に違反しないとの考え方が妥当です。

1-3.独占禁止法に違反しないの?

不動産会社が火災保険への加入を強制することは違法ではありません。

ただ、不動産会社が「保険会社を指定する場合」は独占禁止法に抵触する可能性があります

たとえば「当社が指定する保険会社に加入することが条件です!」といったケースです。


独占禁止法とは、簡単に言えば、公正で自由な競争を促進することを目的とした法律です。

「保険会社は他社と競争することによって、よりよい保険商品が生まれる。そして、消費者は自分のニーズに合った保険商品を選択することができる。」

これが本来望ましい姿ですが、不動産会社が保険会社を指定することで、下記のようになってしまいます。

「保険会社が他社と競争しないから、よりよい保険商品が生まれない!そして、消費者は自分のニーズに合った保険商品を選択することができない!」

公正で自由な競争がされなければ、下記の独占禁止法の第19条に違反します。

独占禁止法 第19条

事業者は、不公正な取引方法を用いてはならない。

もし、不動産会社が保険会社を指定する場合で、その火災保険が気に入らないときは、それなりの対応をする必要があります(後述します。)

参考までに、下記のURLの公正取引委員会の回答も参考になります。

教えて!goo:独禁法に反するのでは? 賃借申込人に保険者・保険代理店を指定して保険契約させる行為

1-4.加入せざるを得ないが、そもそもメリットがある保険!

ここまでお話ししてきたとおり、火災保険への加入は強制ですが、そもそも借主にとってはメリットがあり加入すべき保険です。

万が一、火事を起こしてしまい、1,000万円の賠償責任を負うことになったとしましょう。

あなたは1,000万円の損害賠償を支払うことができるでしょうか?

支払うことができるのであれば、火災保険は必要ないかもしれません。

しかし、支払うことができないのであれば、火災保険に加入しておかないと、人生を棒に振ることになりかねません。

火事が起こる可能性はゼロではないので、火災保険は加入しておいた方が安心です。

ただ、不動産会社が指定する火災保険は、保険料が必要以上に高くなっていることがあるので、注意が必要です。

2.不動産会社の火災保険料が高い2つの理由

不動産会社が指定する火災保険が高い理由は、下記の2つがあります。

  1. 保険料に不動産会社のマージンが含まれている。
  2. 保障額が一律で設定されている

不動産会社は損害保険の代理店をしているケースが多く、その場合、代理店として火災保険を紹介しています。

火災保険料には不動産会社のマージンが含まれており、火災保険料の30%くらいが相場です(高いところは50%なんてことも)。

また、火災保険は本来、借主の家財の状況などに合った保障額を提案すべきですが、そこまで手が回らずザックリとしたプランを提案しているケースが多いです。

たとえば、「1DKで一人暮らしなら2年契約で2万円のプランね!」みたいなザックリとした感じです。

借主の状況に合っていなければ、補償内容を見直したり、他社の保険に変更することで、保険料を安く抑えることができるケースがあります。

そのためには、火災保険の仕組みを理解しておくことが大切です。

では、どのような仕組みになっているのか、分かりやすく説明していきます!

3.意外だった!火事は原則として賠償責任がない⁈

まずは火事を起こした場合に、どのような賠償責任を負うのか見ていきましょう。

そもそもですが、もし自分のミスで他人に迷惑をかけたなら、それによって生じる損害を賠償しなければなりません。当然のことですね^^;

このことについては、民法の709条に定められています。

民法 第709条

故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

しかし、火事を起こしたとなると、「失火の責任に関する法律(略して失火責任法)」により、話がかなり変わってきます。

簡単にいうと、「火事を起こしても、重大な過失がなければ、損害を賠償しなくていいよ!」といった内容です。

失火責任法

口語訳:民法第709条の規定は、失火の場合には、適用しない。ただし、失火者に重大な過失があったときは、この限りでない。

条文:民法第七百九条ノ規定ハ失火ノ場合ニハ之ヲ適用セス但シ失火者ニ重大ナル過失アリタルトキハ此ノ限ニ在ラス

重大な過失とは、例をあげると分かりやすいのですが、

  • 天ぷらを揚げている最中に、長時間その場を離れて火事になった
  • 寝タバコで火事になった

など、「それをやったら火事になるよね!」ってことが今までの裁判で認められています。

それ以外(重過失以外)であれば、火事を起こしたとしても、賠償責任はありません。
たとえ隣の家が全焼したとしてもです。

意外ではないでしょうか?


この「失火責任法」は明治32年に定められた古い法律で、むかしの日本は木造家屋が密集しており、火事がおこると火が次から次に燃え移りやすい環境でした。

そのような環境のなかで、火事を起こした方が、被害者全員に対して賠償責任を負うことは困難なため、この法律が定められた言われています。

今の時代にはマッチしていないように思えますが、今でも適用されている法律です。

「賠償責任がないなら、火災保険いらないよね?」との意見がでてきますが、貸主に対しては失火責任法ではなく賃貸借契約により賠償責任が生じるため、火災保険が必要になります。

4.火災保険が必要な理由は賃貸借契約にある

賃貸借契約では、借主には「借りた部屋を返すときは、借りたときの状態に戻して返さなければならない。」という原状回復義務があります。

この義務により、火事で部屋が焼けたとしても、借りたときの状態に戻さなければなりません。

もし原状回復を行わなければ、借主は民法第415条の債務不履行にもとづく損害賠償責任を負うことになります。

民法 第415条

債務者がその債務の本旨に従った履行をしないときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。債務者の責めに帰すべき事由によって履行をすることができなくなったときも、同様とする。

火事で焼けた部屋をもとの状態に戻すには、高額なお金が必要になります。

したがって、火災保険への加入が必要になってきます。

以上、これらの基礎知識を把握したうえで、火災保険の補償内容を見ていきましょう。

5.火災保険の補償は主に3つ!どれを節約する?

賃貸住宅の火災保険は、以下の3つの保険がセットになっているケースが多いです。

  1. 家財の火災保険
  2. 借家人賠償責任保険
  3. 個人賠償責任保険

基本的には主契約が「家財保険」で、特約として「借家人賠償責任保険」や「個人賠償責任保険」などをつける仕組みになっています。

このうち、貸主に対して損害賠償を補償してくれるのが「借家人賠償責任保険」です。

したがって、主契約の「家財の火災保険」と特約の「借家人賠償責任保険」は必須であり、その他「個人賠償責任保険」はあった方が良い保険になります。

では、それぞれどのような保険なのか、また、補償内容をどのように見直したらいいのかを見てきましょう。

5-1.家財の火災保険

家財の火災保険とは、テレビ・冷蔵庫・机・タンス・洋服などが火事で焼けた場合はもちろん、天災や盗難被害にあった場合などにも補償してくれる保険です。

例えば、隣の住人が火事を起こし、あなたの家財も全焼したとしましょう。

あなたは「弁償してよ!」と言いたくなると思いますが、失火責任法により、隣人に重過失がなければ弁償する義務がありません。

理不尽のように思えるかもしれませんが、「自分の家財は、自分の保険で補償しましょう!」といった話になります。

5-1-1.保障額を見直そう!

家財の火災保険は、いくらの保障額をつけるのかによって保険料が変わってきます。

参考までに、下記の表は家財の目安を家族構成別・年齢別にまとめられたものです。

独身だと家財を約300万円分持っていることが目安とされています。

家財保険の目安

(出典:損保ジャパン日本興亜「THE すまいの保険」)

上記の表はあくまでも目安であり、人によって家財の量は違います。

「もし、家財をもう一度買い直すとしたら、いくら必要なのか?」を考えてみましょう。

ちなみに、都道府県民共済の火災保険は、下記の表のように保障額を100万円単位で設定できるようになっています。

保障額 保険料(木造) 保険料(鉄筋コンクリート)
100万円 800円/年間 480/年間
200万円 1,600円/年間 960/年間
300万円 2,400円/年間 1,440/年間
400万円 3,200円/年間 1,920/年間

※限度額は一人につき400万円までになります。(例:家族が2人の場合は800万円までです。)

この家財の火災保険は借主のための保険であり、極端に言えば貸主には関係のない保険です。

したがって、借主が保障額を自由に設定することができます。

5-2.借家人賠償責任保険

借家人賠償責任保険は、火事を起こしたときに、貸主に対して損害賠償を補償してくれる保険です。

貸主や不動産会社は、この借家人賠償責任保険に加入してほしいがために、火災保険への加入を強制しています。

この保険は、火事で焼けた部屋を元どおりに原状回復する際に役立ちます。

5-1-2.保障額を確認しよう!

この借家人賠償責任保険も、保障額によって保険料が変わってきます。

賃貸住宅の場合、保障額は500万円から2,000万円くらいで設計されているケースが多いです。

保障額については不動産会社から指示があるはずですが、明らかに高いケースもありますので注意が必要です。

参考までに、私が借りているマンション(2LDK・約58㎡・築25年)の保障額は、不動産会社の許可のもと1,000万円にしています。

保障額について下記の記事も参考になります。

Yahoo!知恵袋:借家人賠償責任保険の、保険金額について、教え・・・

ちなみに、都道府県民共済の火災保険の場合、下記の表のように保険料が変わってきます。

保障額 保険料(木造) 保険料(鉄筋コンクリート)
500万円 2,000円/年間 4,000円/年間
1,000万円 1,000円/年間 2,000円/年間

※保障額は500万円か1,000万円のどちらかになります。

5-3.個人賠償責任保険

個人賠償責任保険は、個人が日常生活において偶然に起こした事故により、他人に法律上の損害賠償責任を負ったときに補償してくれる保険です。

例えば、下記のようなケースが対象になります。

  • ベランダから植木鉢を落として、通行人にケガをさせた。
  • 外出中に洗濯機のホースが外れて水漏れし、下階の部屋を水浸しにした。
  • 自転車で歩行者に接触し、ケガをさせた。

賃貸住宅に関わる事故だけでなく、日常生活においての事故も対象になります。

また、ひとつの契約で家族全員を保証できるものもあり、その場合、自分の子どもが事故を起こしたときにも役立ちます。

2013年には、子どもが自転車事故を起こして相手方が意識不明になり、親に約1億円もの賠償を命じる判決がでました。

そんな時に役立つ保険なので、保障額は1億円以上にしておくと安心です。

注意点として、もし自動車保険でこの特約をつけていれば、火災保険で加入する必要がないかもしれませんので、いま一度ご確認ください。

ちなみに、都道府県民共済の場合は、保障額が3億円限度で、保険料は1,680円/年間です。

個人賠償責任保険と借家人賠償責任保険の違い

参考までにですが、個人賠償責任保険は「借りたもの」に対しては補償されません。

賃貸住宅は「借りたもの」であり補償の対象にはならないため、貸主に対しての補償は借家人賠償責任保険が必要になります。

6.火災保険はどこの保険会社がおすすめなの?

火災保険でおススメなのは、都道府県民共済の火災保険(火災共済)です。
私も現在加入しています。

共済は、そもそも「組合員の助け合い」で成り立つ非営利事業のため、保険料が安いです。

さらには、毎年の決算で利益がでたときに、その分、加入者に返金する「割戻金(わりもどしきん)」という制度がありますので、保険料がさらに安くなります。

では、保険料がいくらになるのかシミュレーションしをてみましょう。

今回は、ワンルーム一人暮らしを例に、下記の保障額で計算してみました。

  • 家財:300万円
  • 借家人賠償責任:1,000万円
  • 個人賠償責任:3億円

保険料は、賃貸住宅の構造(鉄筋コンクリート造や木造など)によって差があります。
木造よりも鉄筋コンクリートの方が安くなります。

種類 保障額 保険料(年間
鉄筋コンクリート 木造
家財 300万円 1,440円 2,400円
借家人賠償責任 1,000万円 2,000円 4,000円
個人賠償責任 3億円 1,680円 1,680円
合計 5,120円 8,080円
  • ※家財の保障額は「100万円単位」で選ぶことができます(一人当たり400万円が限度)。
  • ※借家人賠償責任は「500万円」か「1,000万円」のどちらかを選ぶことができます。

保険料は上記の金額ですが、さらに、毎年戻ってくるお金(割戻金)がある場合があります。

私の場合、平成27年度は、保険料(年間)の約30%が返金されました。

もし、割戻金が30%の場合、保険料の実質負担額は下記のようになります。

鉄筋コンクリート 木造
保険料(年間) 5,120円 8,080円
割戻金(30%の場合) -1,032円 -1,920円
実質負担額 4,088円 6,160円

 

鉄筋コンクリート造で年間4,088円、木造でも年間6,160円だったら、安い方だと思います。

デメリットとしては、借家人賠償責任保険の上限が1,000万円までしかありません。

もし、不動産会社が1,000万円以上を指定する場合は、他の保険会社を選びましょう。

その場合、日新火災の「お部屋を借りるときの保険」もおすすめです。

公式サイトにて簡単見積もりができます。

ちなみに、下記の条件だと保険料(年間)は6,000円になります。

  • 家財:300万円
  • 借家人賠償責任:2,000万円
  • 個人賠償責任:1億円
  • 修理費用:300万円
  • 被害事故法律相談費用等:30万円

まとめ

以上、「賃貸住宅の火災保険の加入は必要なの?強制なの?」でした。

参考になれば幸いです!