私が売買仲介の営業マンをしていた頃の話です。
ある転売業者が競売物件を落札し、リフォームをして売り出している戸建てがありました。
私が勤めていた不動産会社は、その物件の売却を依頼されていました。
その物件でオープンハウスをしていると、何故か、2匹の野良犬がよく遊びに来るのです。
後日、その理由を知ったのですが、その背景には、せつない話がありました。
このページでは、その時の話をしたいと思います。
転売業者からその物件の売却の依頼を受けて、まずは、先輩営業マンがオープンハウスをしました。
会社に戻って感想を聞いてみると、「日当たりがいいのに、家の中が冷え込む」と、言っていました。
そして、別の日に、今度は別の先輩営業マンがオープンハウスをしました。
すると、「途中で頭痛がしてきた」とのこと。
その話を聞いて、何だか不吉に感じていました。
後日、今度は私がオープンハウスをしました。
すると、確かに日当たりはいいけど、なんだか家の中がシーンとしており、冷え込む感じがありました。
だけど、頭痛は特にありませんでした。まぁ、気のせいかもしれないので、それはよしとして。
ただ、他に気になることがありました。それは、家の敷地内に、2匹の野良犬がよく遊びに来るのです。
敷地内に入ってきて、庭でウロウロしたりして、しばらくしたら出て行きます。1日のうちで、それを数回繰り返していました。
電話で先輩営業マンにこの話をすると、先輩営業マンがオープンハウスをしたときも、犬が来たとのことでした。
「何故、犬が来るのだろう?」、「まさか、オープンハウスをしているから?」なんてことを考えながら、不思議に思っていました。
後日、先輩営業マンが近所の方から聞いた話によると、
前の所有者の方は、事業に失敗して借金を抱えてしまい、海で自ら命を絶ったとのことでした。だから競売物件になったとのこと。
そして、家の来ていた犬は、前の所有者の方が飼っていたペットとのことでした。
買主がいなくなってペット達は野良犬となり、さまよっていたようです。なんとも言えない、せつない話でした。
その後、その物件は他の不動産会社が客付けをしたので、2匹の犬がどうなったのかは知りません。
「こんなこともあるんだな~」と、記憶に残る物件でした。
以上、「もともと競売物件だった中古住宅であった、せつない話」でした。